2005/04/29

[あ]で始まる語句・ことわざ

合縁奇縁あいえんきえん):【意味】人間関係には、理屈を越えた「気が合う、合わない」という感覚的なものがあるのだが、それはみんな人の意思を越えた不思議な「縁」によるものなのだ、ということ。(講談・梁川庄八、大久保彦左衛門、紀伊国屋文左衛門、笹川繁蔵、慶安太平記、寛永三馬術、落語・道灌、反魂香、蜀山人、雑俳)(参照)→縁は異なもの

愛想もこそも尽き果てたあいそもこそもつきはてた):【意味】「愛想が尽きた」の強調表現。「もう、すっかりいやになった」ということ。「こそ」には「小想」という字をあてる。(講談・梁川庄八、伊賀の水月、天明白浪伝、落語・宮戸川、厩火事、百人坊主、寝床、木乃伊取り、代脈)

相手変われど主変わらずあいてかわれどぬしかわらず):【意味】相手が変わっても、本人は相変わらずであること。「相手変わらず主変わらず」(落・三軒長屋)などという言い方も。(講談・岩見重太郎、落語・三軒長屋)

相手のない喧嘩はできないあいてのないけんかはできない):【意味】何をするにでも一人相撲では仕方がない、ということ。(落語・蒟蒻問答)

逢い見ての後の心にくらぶれば、昔は物を思わじあいみてののちのこころにくらぶれば、むかしはものをおもわじ):【意味】 百人一首にもある藤原(権中納言)敦忠の歌「あひ見てののちの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり」(逢瀬を遂げた後の、切ない気持に比べれば、逢う以前の頃の物思いなど、なきに等しかったのだ、の意)による。(講談・妲妃のお百)

会うは別れのはじめあうはわかれのはじめ):【意味】人と人は出会えば必ず別れというものがある、ということ。白居易の詩より。(講談・水戸黄門、磯貝十郎左衛門)

青菜に塩をかけられたようあおなにしおをかけられたよう):【意味】元気だった人が、叱責されたり不運に遭遇したりして、青菜に塩をふりかけたように、急にしおれてしまうことをいう比喩表現。(講談・赤穂義士本伝、落語・京見物、相撲の蚊帳、地見屋)

青は藍より出でて藍より青いあおはあいよりいでてあいよりあおい):【意味】「荀子」より。藍から取った青色は、藍よりも青い=弟子が師匠よりも優れていること。→「出藍の誉れ」ともいう。(講談・中村仲蔵)(反対)→弟子は師の半芸に至らず

赤い顔してお酒を飲んで後の勘定で蒼くなるあかいかおしておさけをのんであとのかんじょうであおくなる):【意味】遊郭で芸者幇間をあげて遊ぶ、その時は極楽にいるような面白さだが、後で勘定、ということになると蒼白になるくらい恐ろしい金額を請求されるのである。(講談・玉菊燈籠)

赤い布団の上で言われたことを本当にするのは馬鹿あかいふとんのうえでいわれたことをほんとうにするのはばか):【意味】遊女の言うこと(自分に惚れているというセリフ)などを真に受けてはいけない。遊女と交わした所帯約束は裏切られるのが常である。なぜなら、彼女たちは客をその気にさせて金を遣わせるのが商売(手管)だからである。(講談・関東七人男)

(赤)児を捨てる藪はあれども、身を捨てる藪はないあかごをすてるやぶはあれども、みをすてるやぶはない):【意味】貧乏して、赤ん坊を捨てることはあっても、自分の身を捨てることはできない。人間は身勝手なものだということ。(講談・野狐三次、安中草三郎、落語・真景累ヶ淵)

秋風や音羽の滝は清水の結ぶ心は涼しかるらんあきかぜやおとわのたきはきよみずのむすぶこころはすずしかるらん):【意味】清水寺の御詠歌(仏閣を順礼するときにうたう短歌で、独特の詠じ方がある)。上野の清水寺のものは京都のものと同じ。(落語・景清)

「商い」てえくらいだから飽きずにやらなくちゃいけねえあきない、てえくらいだからあきずにやらなくちゃいけねえ):【意味】商売は根気よく続けなければものにならない、というシャレを含んだ教訓。(講談・魚屋本多、落語・道具屋、時そば、豆屋)

商いは牛の涎あきないはうしのよだれ):【意味】商売というものは気を長く持ち、利を急いで求めようとせず、客の関心を逸らさないように努めなければ成功しない、という教訓。(落語・古着屋)《い》

秋の日は釣瓶落としあきのひはつるべおとし):【意味】秋の夕日は沈むのが早いことの例え。(講談・幡随院長兵衛、春風臆病問答)

呆れかえってそっくり返って天神様の脇差あきれかえってそっくりかえっててんじんさまのわきざし):【意味】菅原道真公(の像)の差している刀が反っていることから、「呆れ返る」の強調表現を洒落てこういう。(落語・双蝶々、五人廻し)

あきれ蛙の頬かぶりあきれかえるのほおかぶり):【意味】「あきれ返る」の強調表現。蛙は目が上についているので頬かぶりをすると目が見えなくなる。「あきれ返って目の前真っ暗」というような意味。(講談・寛永三馬術、武林唯七)

商人は損と元値で蔵を建てあきんどはそんともとででくらをたて):【意味】川柳。商人は「この値で売ったら損」「これが元値」という嘘がうまくなければ、儲からないということ。(落語・高田の馬場)

商人は馬鹿になれあきんどはばかになれ):【意味】お客に向かって、利口ぶっていてはいい商売はできない、ということ。だから与太郎の方が商売にはかえって向いているのかも知れない?(落語・孝行糖)

悪盛んなるときは天に勝ち、天定まって人に勝つあくさかんなるときはてんにかち、てんさだまってひとにかつ):【意味】悪人が調子に乗っているときは、誰もその行いを止めることができないが、やがてしかるべき時期がくれば必ず天罰がくだるものである。(講談・猿飛佐助、越後伝吉、寛永御前試合)(参照)→人盛んなる時は天も暫く是を置く、人さかんなれば天にかつ凡夫盛んなる時は神も祟りなし

悪事の栄える例なしあくじのさかえるためしなし):【意味】悪い行いをする者が長く栄華をきわめた例はない。いずれ自ら悪行の報いを受けるものである。(講談・越後伝吉、寛永御前試合)(参照)→前項

悪事は千里を走り、好事は門を出ずあくじはせんりをはしり、こうじはもんをいでず):【意味】悪いこと(噂)は、あっという間に遠くまで知れ渡るものだ、ということわざ。逆に良いことはなかなか人の知るところにはならない。後半と対句になっているが、前半が独立してよく使われる。(講談・寛永三馬術、和久半太夫、寛永御前試合、妲妃のお百、天保六花撰、緑林五漢録、落語・夢金、猫久)

悪女の深情けあくじょのふかなさけ):【意味】醜い女は美女よりも愛情(または嫉妬心)が深い、ということ。「悪女」とは性質の悪さばかりをいうのではない。(講談・相馬大作、安中草三郎)

悪銭身につかずあくせんみにつかず):【意味】不正な(後ろ暗い)やり口で入手した金というのは、とかくすぐに遣ってなくなってしまいがちなものだ、ということ。(講談・水戸黄門、安政三組盃、新吉原百人斬り、富蔵藤十郎、落語・竈幽霊)

悪態もくたいあくたいもくたい):【意味】塵芥、転じて悪口雑言を意味する「あくたもくた」の前半を「悪態」とし、後半に脚韻をきかせた言い方。(取るに足らないような)悪口の数々のこと。(講談・新門辰五郎)

悪に強きは善にも強いあくにつよきはぜんにもつよい):【意味】悪心の強い人は、同時に善心も強い(大悪人が一旦改心すると、途方もない善人になる)。芝居の河内山宗俊のセリフでも有名。(講談・水戸黄門、名刀捨丸、猿飛佐助、左甚五郎、鼠小僧次郎吉、天保六花撰、夕立勘五郎、安中草三郎)(参照)→大悪は善に近し極悪の極は善、極善の極は悪

悪筆唐様に似たりあくひつからようににたり):【意味】下手な字はかえって中国風の書体に似ている、ということ。(講談・南部坂雪の別れ)

揚げ膳据え膳あげぜんすえぜん):【意味】食膳を上げ下げすること、そのような行動をしなくてもすむ(人がすべてやってくれる)ような、安楽な境涯のことをいう。(講談・勤王芸者、安中草三郎、落語・蒟蒻問答)

阿漕ヶ浦に曳く網も度重なれば現れるあこぎがうらにひくなみもたびかさなればあらわれる):【意味】「あふことをあこぎの島に引く網のたびかさならば人も知りなむ」という「古今六帖」の歌に由来する言い回し。夜に密漁することが、度重なるといつかは広く知れ渡る=隠し事(たとえば不倫関係のようなもの)も繰り返していると発覚せずにはいられない、ということ。由来を「伊勢の海阿漕ヶ浦に曳く網も度重なればあらはれにけり」とするのは落語「西行」。「引く舟」とも。(講談・天一坊、勤王芸者、越後伝吉、赤穂四十七士伝、関東七人男、落語・西行、怪談市川堤)(参照)→内秘ごとは暴れやす

顎で蝿を追う病人は助からないあごではえをおうびょうにんはたすからない):【意味】手で蝿を追い払うこともできないほど衰弱した病人(腎虚のため衰弱した病人)は、到底助かる見込みはないということ。(落語・首提灯)

朝起きは三文の得あさおきはさんもんのとく):【意味】早起きするといいことがある(何かしら利益がある)、ということ。(講談・水戸黄門、伊賀の水月、落語・ろくろっ首)(同義)→早起きは三文の徳

朝帰りだんだんうちが近くなりあさがえりだんだんうちがちかくなり):【意味】川柳。夜遊び(廓遊び)をした亭主が、家が近づくにつれどんどん気まずい思いになり、帰宅しにくい様子。(落語・五人廻し)

朝酒は女房を質に置いても飲むあさざけはにょうぼうをしちにおいてものむ):【意味】大事な? 女房を質において金にかえても、朝酒を飲むもんだということ。一種の見栄というか虚勢。「借金を質に置いても」(講談・本所五人男)とも。(講談・慶安太平記、落語・付き馬)(参照)→女房を質に置いても

朝茶はその日の災難を避けるあさちゃはそのひのさいなんをさける):【意味】朝飯前に一服の茶を喫すると、一日の災難よけになるという俗信。(落語・紙入れ)

あざのつくほどつねっておくれ それを惚気の種にするあざのつくほどつねっておくれ それをのろけのたねにする):【意味】都々逸。廓遊びに行って、女に甘いことを言われて、あざのつくほどつねられたい、友達にそのあざを見せてさんざん惚気るんだから。(落語・唐茄子屋)

朝は朝星、夜は夜星をいただいて働くあさはあさぼし、よはよぼしをいただいてはたらく):【意味】朝は夜明け前から、夜は日暮れまで精を出してみっちり働くこと。(落語・算段の平兵衛)

欺くにその道を以てすれば君子も防ぎ難しあざむくにそのみちをもってすればくんしもふせぎがたし):【意味】しかるべき計略をもってすれば、君子と言われる人物でも欺くことができる。(講談・猿飛佐助)

足が上がるあしがあがる):【意味】主人から暇を出されること、クビになること。(落語・足上がり)

足が早いあしがはやい):【意味】食品が腐りやすいこと。(落語・酢豆腐、猫の皿)

足軽眠がる、空腹(ひだる)がる、鉄砲持たせりゃ重たがる(足軽だるがるひだるがる、鉄砲持たせりゃ重たがる、弁当持たせりゃ食いたがる、うちへ帰れば眠たがる、女を見せれば抱きたがる)(あしがるねむがる、ひだるがる、てっぽうもたせりゃおもたがる):【意味】武士の最下級である足軽の気質を評してこのように言う。とかくなまけたがり、すぐに空腹を訴え、不平をもらす仕方のない連中だ、というのである。(講談・義士討ち入り、烈女お高、落語・紫檀楼古木)

悪しき病あれば去るべしあしきやまいあればさるべし):【意味】かつての「七去」のひとつ。女性にたちの悪い持病があれば、それは離縁される正当な理由であるというもの。(落語・橋場の雪=夢の瀬川)(参照)→三年添って子なきは去るべし

朝北風に夕南風あさならいにゆうみなみ):【意味】夏の天気をいう諺。朝は北風、夕方は南風が吹くのが通例である、の意。(落語・芝浜)

朝に道を問い夕に死すとも可なりあしたにみちをといゆうべにしすともかなり):【意味】論語「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」より。人の道を聞いて悟ることができれば、仮にその日の夕方に死んでも本望である、ということ。(講談・大塩瓢箪屋裁き、祐天吉松)

足駄履いて首ったけあしだはいてくびったけ):【意味】男が女に(その逆の場合もある)ぞっこん惚れていることをいう。足駄を履いてさえ、首に達するほど全身深く溺れること。(講談・幡随院長兵衛、落語・三枚起請、首ったけ、酢豆腐)

足許から鳥が飛び立つような騒ぎあしもとからとりがとびたつようなさわぎ):【意味】突然身近に意外な事件が出来すること、不意の事態にあわてる様子をいう。一時的に驚かされるのだが、「危険が差し迫る」というニュアンスではない。(講談・武林唯七、荒木又右衛門、大島屋騒動、笹川繁蔵)《い》

明日ありと思ふ心の仇桜夜半に嵐の吹かぬものかはあすありとおもうこころのあだざくらよわにあらしのふかぬものかは):【意味】桜を見るのは明日でもいい、と思う気持ちは間違いである。夜半に嵐が吹き、桜が散ってしまわないと誰が言えるだろうか。出典不明だが、親鸞上人の歌であると伝えられる。あてというものは往々にして外れるということ、予定通り物事は進まないこと、あるいは無常を表したもの。(講談・寛永三馬術、両越大評定、玉菊燈籠、落語・天王寺詣り、佃祭、かつぎや、質屋庫他)

明日(後)の百両より今日(今)の五十両あすのひゃくりょうよりきょうのごじゅうりょう):【意味】将来の大金より、現在とりあえずまとまった額の金がほしい、ということ。また、そのような当座間に合う金の方が本来人間には有用であるということ。明日のことはあてにならないから、今日確実に入手できる五十両をとるべし、という意味もある。(講談・鼠小僧次郎吉、野狐三次)

明日は明日の風が吹くあすはあすのかぜがふく):【意味】明日のことはまた明日の運命に任せ、あれこれ心配しない。また、どうにかなるという楽観的な考え方のこと。「あしたはあしたのかぜがふく」とも読む。(落語・言訳座頭、鼠穴、掛取万歳)

東男に京女(郎)(あずまおとこにきょうおんな):【意味】男らしくて粋なのは江戸っ子で、美しく女らしいのは京都の女である、という諺。(講談・安政三組盃、玉菊燈籠、柳沢昇進録、落語・鼻きき源兵衛、京見物、角兵衛の婚礼)

汗水を流して習う剣術の役にも立たぬ御代の目出度さあせみずをながしてならうけんじゅつのやくにもたたぬみよのめでたさ):【意味】泰平の世なればこそ、武士は元より、町人にも剣術の稽古が流行する。それは実戦に役立てようとするのではないからで、これも実に天下泰平のしるしではないか、という皮肉のきいた狂歌。(落語・蚊いくさ)

遊ばんと欲す、遊びて足らず、楽しまんと欲す、楽しみて足らず、偽らんと欲す、偽りて足らず、貪らんと欲す、貪りて足らず、遂に盗まんと欲すあそばんとほっす、あそびてたらず、たのしまんとほっす、たのしみてたらず、いつわらんとほっす、いつわりてたらず、むさぼらんとほっす、むさぼりてたらず、ついにぬすまんとほっす):【意味】沢庵禅師の悟(ご)であるという。人間が煩悩に破れて堕落してゆくプロセスをいう。(落語・一ト目上り)

遊びをして再会を返さないのはお客の恥、馴染を付けさせないのは花魁の腕が鈍いあそびをしてうらをかえさないのはおきゃくのはじ、なじみをつけさせないのはおいらんのうでがにぶい):【意味】遊女買いをして、その遊女を次回再度指名することを「うらを返す」といい、三度目以降を「馴染み」という。一回遊んだら、「うらを返す」のがお客のマナーであり、それで「馴染み」にならなければ、それは花魁のサービスが悪いのだという廓のセオリー。(落語・居残り佐平次)

与えるは取るあたえるはとる):【意味】何か物をくれるという人には必ず下心がある(から用心しなければいけない)ということ。(講談・佐倉宗五郎)(参照)→うまき物食わす人に油断すな

あだが深川勇みが神田人の悪いが飯田町あだがふかがわいさみがかんだひとのわるいがいいだまち):【意味】江戸っ子の中でもとりわけ神田の人のプライドが高い、ということ。ちなみに「あだ」は色っぽく、洗練された雰囲気をいう。(講談・玉菊燈籠)

あたじけないあたじけない):【意味】けちな、しみったれた、吝嗇な。卑賤な。「あた湿ない」と表記する。(講談・梁川庄八、汐留の蜆売り)

あたぼうあたぼう):【意味】江戸っ子の啖呵に出てくる常套句。「あたりめえだ、べらぼうめ」の略。(落語・大工調べ)

頭かくして尻かくさずあたまかくしてしりかくさず):【意味】悪事、自分の醜い部分を、隠蔽したと思いこんでいるが、実はその一部分しか隠しえていないという愚かしい状態をいう。キジが草むらに隠れるときに、首をつっこんで尾は出したままであることが由来であるという。(講談・伊賀の水月)《い》

頭はげても浮気はやまぬあたまはげてもうわきはやまぬ):【意味】年を取って角が取れておとなしくなるどころか、(男の)浮気心というものはやまないものだ。(落語・道灌)

新しき畳も打てば塵が立つあたらしきたたみもうてばちりがたつ):【意味】どんなに清廉潔白な人でも、よく調べれば必ず欠点や弱味というものがあるということ。(講談・曾呂利新左衛門、天保六花撰、落語・山崎屋)

あたらぬがある故ふぐの怖さかなあたらぬがあるゆえふぐのこわさかな):【意味】川柳。ふぐを食べていつも当たるのであれば、いくら美味い食べ物であっても、誰も食べようとはしない。当たらない場合があるから、みんなリスクを冒してまで食べるのであって、だからふぐは怖いのである。(落語・お直し)

当たりキ車力按摩の尻あたりきしゃりきあんまのしり):【意味】あたりまえ、の洒落言葉。(落語・お茶汲み)

当たるも八卦当たらぬも八卦あたるもはっけあたらぬもはっけ):【意味】占いは当たるときもあれば外れる時もある(百発百中ということはありえない)ということ。(落語・ちきり伊勢屋、牡丹燈籠)

あちら立てればこちらが立たず、両方立てれば身が立たぬ、九尺二間に戸が一枚あちらたてればこちらがたたず、りょうほうたてればみがたたぬ、くしゃくにけんにとがいちまい):【意味】片方に良いようにすれば、他方には悪くなり、無理して両方うまくいくようにはからうと自分の立場がなくなる、ということ。間口九尺(約2.7メートル)に戸が一枚(普通三尺=90センチ)では、あちらを「閉てる」とこちらが「閉たない」。「九尺間口に戸が一枚」(落・赤垣源蔵)などともいう。(落語・城木屋、袈裟御前)

暑いも寒いも彼岸まであついもさむいもひがんまで):【意味】「暑さ寒さも彼岸まで」。春と秋の彼岸ごろに、それぞれ寒さと暑さが収まって気候がよくなる、という諺。(落語・天王寺詣り)

鉄面皮なやつあつかわなやつ):【意味】面の皮が厚い、ふてぶてしくあつかましい奴のこと。(落語・王子の幇間)

暑さを避け、寒さを避けるから「酒(さけ)」あつさをさけ、さむさをさけるからさけ):【意味】暑さしのぎ、寒さしのぎの役に立つ結構なものだから酒は「さけ」という名である、ということ。(講談・魚屋本多)

当て事と(越中)ふんどしは向こうから外れるあてごととふんどしはむこうからはずれる):【意味】「当て事」は予想(期待)して当て(頼み)にすること。とかく当てにしていることは先方の都合で外れやすいものである、という格言。(講談・寛永三馬術、伊賀の水月、田宮坊太郎、落語・五人廻し)

後足で砂をかけるあとあしですなをかける):【意味】去り際に更に迷惑をかけて行くこと。(講談・朝顔日記)(反対)→立つ鳥跡を濁さず

あと白浪と逃れるあとしらなみとのがれる):【意味】「知らない」と「白浪」をかけた表現。行方知れずになること。(落語・城木屋、片袖)

後の喧嘩を先にするあとのけんかをさきにする):【意味】後日もめごとになりそうな事柄は、前もって話をつけておく(後で文句が出ないようにみんなで議論しておく)、という知恵をいう。(落語・延陽伯、仔猫)(参照)→後腹疚めず

後は野となれ山となれあとはのとなれやまとなれ):【意味】現在さえ良ければ、未来はどうなっても差し支えないということ。(講談・猿飛佐助、木村長門守、越後伝吉、妲妃のお百、落語・転宅、千両蜜柑)

後腹疚(痛)めずあとばらやめず):【意味】後腹痛む=出産後に腹が痛くなる、ということに由来し、事後に困ったことが起きないように前もって手を打っておくこと。主に悪人が口封じのため仲間を殺したり証拠を隠滅する場合などに口走る。(講談・梁川庄八、関東七人男、落語・お見立て、二丁蝋燭、夢金)(参照)→後の喧嘩を先にする

穴端へ腰を掛けた奴あなっぱたへこしをかけたやつ):【意味】年を取ってお迎えを待つばかりのような者、耄碌した者。(講談・祐天吉松)

姉と妹に年問うてみたら姉は姉だけ年が上あねといもとにとしとうてみたらあねはあねだけとしがうえ):【意味】当たり前のことをさも意味ありげに歌った文句。(落語・住吉駕籠)(参照)→雨の降る日は天気が悪い、親父俺より年が上、大きな時計と小さい時計、どっちも時間が同じだ

あの人を弁慶よりも強いとは堪忍強き人をいうなりあのひとをべんけいよりもつよいとはかんにんつよきひとをいうなり):【意味】歴史に名の残る武蔵坊弁慶よりも強い人というのは、力が強い、度胸があるなどというよりも、なによりも我慢強い人のことである。(講談・伊達政宗の堪忍袋、木村長門守の堪忍袋)(同義)→堪忍のなる堪忍は誰もするならぬ堪忍するが堪忍、→堪忍の袋は常に首にかけ破れたら縫え破れたら縫え

(惚れて居りァ)菊石も厭面あばたもえくぼ):【意味】好きになった相手のことならば、欠点も長所に見えるという諺。(講談・本所五人男、落語・嫁取り)

虻蜂取らずあぶはちとらず):【意味】あれもこれも、と狙って、結局何も得られないということ。欲の深さを戒める言葉。(講談・大久保彦左衛門、鼠小僧次郎吉)

油っ紙に火のついたようなあぶらっかみにひのついたような):【意味】能弁な人の形容。(講談・水戸黄門)

油を掛けるあぶらをかける):【意味】「油を乗せる」とも。おだてる、調子のいいことを言ってその気にさせる。(講談・宮本武蔵、落語・錦の袈裟、居残り佐平次)

(一文や二文の銭と思うなよ)阿弥陀も金(の光から、地獄の沙汰も金次第)で光る世の中あみだもかねでひかるよのなか):【意味】阿弥陀さまでも、賽銭をたくさんくれる者に多くの利益を与えるものだ。(講談・安政三組盃、越後伝吉、祐天吉松、落語・夢金、幽霊稼ぎ)(同義)→地獄の沙汰も金次第

雨霰雪や氷と隔つれど落つれば同じ谷川の水あめあられゆきやこおりとへだつれどおつればおなじたにがわのみず):【意味】一休宗純の「雨あられ雪や氷とへだつれどとくれば同じ谷川の水」(「骸骨」所収)によると思われる。雨も霰も雪、氷も解けて流れれば皆同じ谷川の水である、ということ。(講談・三家三勇士)

雨に悩める海棠のごとしあめになやめるかいどうのごとし):【意味】美人がうちしおれている様子を、海棠が雨に濡れてしおれている様子にたとえている。寂しげな美女を形容するときのきまり文句。また、「露を含める寒紅梅……」とも続く。(講談・伊達誠忠録、塚原ト伝、天保六花撰)(参照)→海棠に露を含んだような

雨に浴し風に梳り、山に寝ね野に伏してあめによくしかぜにくしけずり、やまにいねのにふして):【意味】「荘子」より。要するに野宿を繰り返して苦しい放浪を続けること。(講談・太閤記、寛永御前試合:後半につづき「樹下石上に一夜の夢を結ぶ」)(参照)→樹下石上を宿とする

雨の降る日は天気が悪い、親父俺より年が上あめのふるひはてんきがわるい、おやじおれよりとしがうえ):【意味】コミックソングの歌詞。ナンセンスというより、極めて当たり前のことを歌っているだけ。(講談・寛永三馬術)(類義)→大きな時計に小さい時計、どっちも時間が同じだ、姉と妹に年問うてみたら姉は姉だけ年が上

雨降って地固まるあめふってじかたまる):【意味】アクシデントやトラブルがあっても、それがきっかけになって、かえって前よりもよく物事の基礎(往々にして人間関係)が固まること。(講談・寛政力士伝、金田屋お蘭、幡随院長兵衛、岡野金右衛門、新門辰五郎、加賀騒動、鰯屋騒動)

雨降りあげくのきのこ野郎あめふりあげくのきのこやろう):【意味】真の信念や実力があるわけではなく、ただ単に時流に乗って幅を利かせているだけお調子者を批判してこういう。(講談・伊賀の水月、大久保彦左衛門)

雨降り風間あめふりかざま):【意味】雨の降る日、風の吹く時。いざというような時、折節。(講談・忠僕直助、祐天吉松、落・星野屋、らくだ、お化け長屋、刀屋、ちきり伊勢屋、猿丸太夫、松枝宿の子殺し)

危ういこと風前の灯あやういことふうぜんのともしび):【意味】風の中についている灯火のように、危難が迫って命などが危ういこと。(講談・水戸黄門、落・お七)

危うきこと累卵のごとしあやうきことるいらんのごとし):【意味】卵を積み重ねたように、崩れやすく危険な状態をいう。(講談・岩見重太郎、西郷南洲)(同義)→危急累卵よりも甚し

過を等しうすればこれを己に買い、功を同じうすればこれを人に売るあやまちをひとしうすればこれをおのれにかい、こうをおなじうすればこれをひとにうる):【意味】共同で仕事・事業などをしていて、間違いが起こればそれを自分に引き受け、もしその功績が認められれば、それは仲間に譲るというエゴのない態度が、人として正しいということ。(講談・幡随院長兵衛)

あやまって改むるに憚ることなかれあやまってあらたむるにはばかることなかれ):【意味】「論語」より。過ちを犯した時は、それと気づいたらためらわず、すぐに改めるべきである。(講談・清水次郎長、名刀捨丸、荒木又右衛門、伊達誠忠録、夕立勘五郎、落語・船徳)

鮎は瀬に住む鳥ゃ木に止まる人は情けの袖に住むあゆはせにすむとりゃきにとまるひとはなさけのそでにすむ):【意味】人が他人の情けにすがるのは恥ずかしいことでもなんでもなく、天然自然なことなのである(だから好意は遠慮せず素直に受けるべきである)、という教訓歌。(講談・阿武松緑之助)

荒木の前に荒木なく、又右衛門の後に又右衛門なしあらきのまえにあらきなく、またえもんのあとにまたえもんなし):【意味】剣豪・荒木又右衛門の古今無双の強さを称賛した言葉。空前絶後の腕前である、という意味。(講談・伊賀の水月)

あらためて孝行するも不孝なり大事の親の肝を潰さんあらためてこうこうするもふこうなりだいじのおやのきもをつぶさん):【意味】狂歌。今までさんざん道楽して不孝の限りを尽くしてきたのに、今になっていきなり心を入れ替えて孝行者になっても、親を驚かせて病気にでもさせるのがオチであるから、むしろ道楽者のままでいた方が孝行というものである、という意味。(落語・二十四孝、おかめ団子)

有難山のかんとんびひゅうとろとろと嬉し鳴きありがたやまのかんとんびひゅうとろとろとうれしなき):【意味】「こいつはありがたい」という時の洒落を含む強調表現。「~昼鳶」という用例が講・「安政三組盃」にもある。(講談・汐留の蜆売り)

蟻の思いも天までありのおもいもてんまで):【意味】どんなに弱くてちっぽけな者でも、その思いは一心になれば必ず天に通じる。(講談・佐倉宗五郎)

主思いの主倒しあるじ:しゅう:おもいのしゅうだおし):【意味】主人思いの行動が過ぎて、かえって主人に迷惑を及ぼすこと。(講談・寛永三馬術、落語・柳田格之進)

有る時払いの催促なしあるときばらいのさいそくなし):【意味】無期限、無催促を条件に金を貸すこと。(講談・夕立勘五郎、加賀騒動、落語・ちきり伊勢屋)

合わせ物は(なら)離れ物あわせものははなれもの):【意味】くっつけ合わせたものは、いずれ離れるものである。元々別々のもの(夫婦は元来他人)なのだから、別れてもおかしくない。(講談・清水次郎長、忠臣二度目の清書、昆寛狐の由来、祐天吉松、木村長門守の堪忍袋、落語・子別れ、あり、塩原多助一代記)

泡を食って出世したのはぼらばかりあわをくってしゅっせしたのはぼらばかり):【意味】慌て者で出世する者はない。泡を食って出世したのは(出世魚の)ボラくらいなものである。(落語・出来心)

あんけらそうあんけらそう):【意味】「この馬鹿野郎」と相手を罵って呼ぶときのきまり文句。「安家来」が語源? (落語・夢金)

鞍上人なく鞍下に馬なく(を見ず)(あんじょうひとなくあんかにうまなく):【意味】見事な乗馬ぶりを表す慣用表現。馬を見ればあたかも鞍の上に人がおらず、乗っている人を見れば鞍の下に馬がいないかのように見えるほど一体化し、自由自在に乗りこなしているさま。(講談・寛永三馬術、荒木又右衛門、乃木将軍、拳骨和尚、母里太兵衛、寛永御前試合、山内一豊出世の馬揃い、落語・目黒のさんま、嵩谷)

案ずるより産むがやすしあんずるよりうむがやすし):【意味】事前にあれこれ気を揉むより、思い切って実際にやってみると案外うまくいく、ということ。(講談・相馬大作、落語・つるつる、双蝶々・上)

暗に罪する者は天之を罰し、明かに罪する者は人之を罰すあんにつみするものはてんこれをばっし、あきらかにつみするものはひとこれをばっす):【意味】隠れて法を犯す者には天罰が下るものであり、あからさまに罪を犯す者に対しては人がこれを処罰する。世の中というのはそういうものだ。(講談・天一坊)

あんにゃもんにゃあんにゃもんにゃ):【意味】口論の際、相手のことを罵倒してこう呼ぶ。「なんじゃもんじゃ」(その地方にはみられない大木のこと)と同義であるという。が、要するに意味はない。(落語・首ったけ)(類義)→すっぱらげっちょ

(聖人も)暗夜の礫(は逃れぬ、避けられぬ)(あんやのつぶて):【意味】不意打ち(闇討ち)を食うこと。防ぎがたい災難のこと。「闇夜の礫」とも。(元来、めったに当たらないこと、あてのない行いをいう)(講談・梁川庄八、宮本武蔵、猿飛佐助、岩見重太郎、妲妃のお百、安中草三郎)

編:松井高志・2004-

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