[え]で始まる語句・ことわざ
永とう(えいとう):【意味】「永当」と字をあて、「いく久しく」の意味。芝居の口上などにも「大入り」をさして使われる言葉。「ながとう」と読む場合もあり。(講談・梁川庄八、名医と名優 :「扨御見物の皆様方、初日より永當永當斯様に御入來下さいまして日々大入繁昌」、落語・甚五郎)
英雄豪傑色を好む(えいゆうごうけついろをこのむ):【意味】英雄・豪傑と言われるような男は、女性に対しても精力を惜しまず傾ける。また当然よくもてる。落語ではもてない奴のセリフのはったりなどに出てくる。(落語・孝女お里、血脈:「英雄色を好むとか申し、どうも物の頭になる方は多く御婦人を愛したと申します」)
英雄の胸中閑日月あり(えいゆうのきょうちゅうかんじつげつあり):【意味】大人物は生死の境というような瀬戸際にあっても、動じないで心中に余裕をもっているものだということ。(講談・紀伊国屋文左衛門:「生別に臨み洒落を云つてゐる。英雄の胸中閑日月ありとは、是等のことでございませうか」)
得たり賢し(えたりかしこし):【意味】物事がうまくいったときに、得意になって発する言葉。「しめた、ありがたい」ということ。(講談・木村長門守 :「得たり賢こしと、重成を惡く惡くと思はせるのが、佞臣の陰險な手管で御座居ます」)
得手勝手(えてかって):【意味】相手の立場を考えず、自己の都合・主張を押しつける姿勢。(講談・加賀騒動 :「それは近頃得手勝手といふもの、円藏とても狂人では御座らぬ」)
得手に帆かけて(えてにほかけて):【意味】待ち構えていたチャンスに恵まれ、得意になって進む様子をいう。(落語・子別れ:「熊さんも呆れ返つて居る内に、女の方で得手に帆をかけて出て行つて了ひました」)
江戸っ子の生まれぞこない金をため(えどっこのうまれぞこないかねをため):【意味】金を持ったら気前よくぱっぱと使ってしまうのが江戸っ子であり、蓄財するような者は江戸っ子の風上にもおけない。(落語・三方一両損 :「ェェ…『江戸っ子のうまれぞこない金をため』なんてえ川柳がありまして……昔の職人てえものはたいへん…この、お金てえものに無頓着」、鼠穴、肥瓶、言訳座頭、掛取万歳、あた棒=大工調べ他多数)(同義)→江戸っ子は宵越しの銭を持たない
江戸っ子は気で持ったもんだ(えどっこはきでもったもんだ):江戸っ子は(参照)→弱きを助け強きをくじく、というような心意気が肝心であるということ。(講談・鼠小僧次郎吉:「江戸っ子はそんな者は大嫌えだ。江戸っ子は気で持ったもんだ。いよいよかなわねえ時は腕ずくで、人の金を取るなら取ると立派なことをいたしやす」)
江戸っ子は五月の鯉の吹き流し口先ばかりはらわたはなし(えどっこはさつきのこいのふきながしくちさきばかりはらわたはなし):【意味】江戸っ子は口先ではポンポン言いたいことを言うが、含むところは何もないさっぱりした人種である。(講談・間十次郎、田宮坊太郎、祐天吉松、落語・大工調べ、厩火事、三人絵師、左甚五郎:「中の職人にこれが聞こえたから黙っちゃいない。江戸っ子は五月の鯉の吹きながし口大きゅうて腸はなし 江戸っ子は腸がないんですね」他)(参照)→厳めしく見えても脆き霰かな
江戸っ子は宵越しの銭を持たない(えどっこはよいごしのぜにをもたない):【意味】江戸っ子は収入があったらそれをその日のうちに消費してしまうもので、翌日までいくらか残しておこうなどという浅ましい了見を持ってはいない。(講談・玉菊燈籠、天保六花撰、落語・反魂香:「どうも、経済にかけては、江戸ッ子ぐらい当てにならないものはない。『宵越しの銭を持たない』てンでな」、鼠穴、とろろん)(参照)→江戸っ子の生まれぞこない金をため
江戸で本所だの深川だのと言うが、川崎の蚊といえば大したもの(えどでほんじょだのふかがわだのというが、かわさきのかといえばたいしたもの):【意味】江戸で蚊の多いところと言えば本所、深川というが、川崎の蚊の多さというのも大したものである。(講談・幡随院長兵衛:「『ヘエ、江戸で本所だの深川だのと云いますが、川崎の蚊といえば大したものでございます。名からして東海道カワサキと云ひますからな』」)(参照)→本所に蚊がいなくなりゃ大晦日
江戸(東京:とうけい)というところは生き馬の目を抜く(えどというところはいきうまのめをぬく):【意味】江戸という都会は生存競争が激しく、身を立てたり成功したりするためみな血眼なので、油断も隙もないところだということ。(講談・田宮坊太郎、落語・甲府ぃ:「巾着切りに会ったんだとさァ……江戸は生き馬の目を抜くてえとこだから気をつけなくちゃいけねえ」、遠山政談、河村瑞賢、牛の嫁入)
江戸の敵を長崎で討つ(えどのかたきをながさきでうつ):【意味】意外なところで(本来予期しなかった奇縁によって)、かつての恨みを晴らす、という意味の言い回し。(講談・安中草三郎:「それで宗三に趣旨の立つやうにして屋敷へ來いといふのは、江戸の敵は長崎といふ謎だ」、落語・月宮殿、長崎の赤飯)
江戸の人間が江戸でまさかこんなことはできねえと、見栄があってそのまさかって坂がどうしてっも越せねえもんだ。知らねえ土地なら何しても構わねえ(えどのにんげんがえどでまさかこんなことはできねえと、みえがあってそのまさかってさかがどうしてもこせねえもんだ。しらねえとちならなにしてもかまわねえ):【意味】「徂徠豆腐」の登場人物、火災(もらい火)に遭って全財産を失った人の良い豆腐屋・上総屋七兵衛のセリフ。「生きるためならなりふりかまわず」ということができない江戸っ子のプライドというものが偲ばれる。(講談・徂徠豆腐:「知らねえ土地へ行って夫婦二人でどんなに身を落としてなりとも一生懸命働こうよ。江戸の人間が江戸でまさかこんなことはできねえと、見栄があってそのまさかって坂がどうしても越せねえもんだ。知らねえ土地なら何しても構わねえ」)
江戸は石の上の住居(えどはいしのうえのすまい):【意味】都会の暮らしは先行きの見えない不安定なものだ、という諺。(講談・玉菊燈籠:「江戸は石の上の住居、生馬の目を抜くといひますから何誰でも此の品物を預かつたといふ御書附を」)
江戸は火事っ早え(えどはかじっぱええ):【意味】江戸はきわめて火事が起きやすく、延焼が早い街であった。「江戸っ子は気が短い」と並んで、人を急がせる(行動や物を催促する)ときに使う表現。(落語・京見物、胴取り:「江戸っ子は気が短えんだ、江戸は火事早えんだ」、双蝶々・下、とろろん、らくだ)
餌のあるところに魚は寄る(えさのあるところにさかなはよる):【意味】おいしげな誘いのあるところに人は集まる、金のあるところに人望が集まるということ。(講談・清水次郎長:「餌のあるところには魚がよる。むこうはおれとちがって親代々からの立派な貸元」)
柄のない(変な)ところへ柄をつける(すげる)(えのないところへえをつける):【意味】なにもないところにこじつけ(疑惑の捏造)をして人に難癖・いいがかりをつける(強請る)こと。「すげる」は「着げる」と表記。(講談・梁川庄八、幡随院長兵衛、寛政力士伝、神崎与五郎:「因縁を附けたら幾らかになるだらうと思つて柄のねえ所へ柄をすげて、いろんなことをいつた上、肩を打つたり痰を引つ掛けたり」、木村長門守、赤穂義士本伝、本所五人男、夕立勘五郎)
襟元の浮世(えりもとのうきよ):【意味】「襟元」は懐具合のこと。羽振りのいい方につくというのが当世風である、ということ。(講談・三家三勇士:「エエ、宜しゅうございます。とかく襟元の浮世といって、いい方につくのが当世でございます」)
得るもの先に立ち、失うもの後につく(えるものさきにたち、うしなうものあとにつく):【意味】富を得た者が何かと優位に立ち、貧しい者は常に人の後塵を拝さねばならない。世の中、金が大事であるということ。(講談・小山田庄左衛門:「得るもの先にたち、失うもの後につく。足なくしてよく走り、羽なくしてよく飛ぶとやら、金というものは尊いものじゃ」)(類義)→銭のないのは首のないのに劣る
袁玄(彦)道(えんげんどう):【意味】「袁彦道」は中国・東晋の人名。博打の名人。そこから転じて、博打のことをいう。(講談・重の井子別れ:「實は此の頃、俺や少々袁玄道に凝つたのぢや」、落語・三人旅)
燕雀何ぞ大鵬の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞたいほうのこころざしをしらんや):【意味】小人には大人物の遠大な志を推し量り、理解することはできない。「大鵬」は「鴻鵠」ともいう。(講談・寛永三馬術、三村次郎左衛門、大石内蔵助:「けれども燕雀安ぞ鴻鵠の志を知らん。大石は世の惡評は耳にも掛けず、遠林寺にあつて静養をいたして居ります」、伊賀の水月、岩見重太郎、難波戦記、落語・蚊いくさ)
円頂黒衣(えんちょうこくい):【意味】頭を丸め、墨染めの衣をまとうこと。僧形のこと。(講談・慶安太平記:「怪しからんことをする者があるものだ。拙者は円頂黒衣の僧だ」、橋弁慶)
縁なき衆生は度し難し(えんなきしゅじょうはどしがたし):【意味】仏法を聴く因縁のない人には、救いの手をさしのべる方法がない。人の意見を聞かない者は助けようがない、縁がないと思ってあきらめることだ、ということ。(講談・国定忠治:「どうだい文藏、岩鐵、そんな話を聞かなけりやア、縁なき衆生は度し難し、此儘乗打をするのだが」、緑林五漢録、天保六花撰、落語・繋馬雪の陣立=追い焚き、将門)
縁のない橋は渡られぬ(えんのないはしはわたられぬ):【意味】縁があるからこそ、たびたび会って頼み事をしたりするのであるということ。強請の相手からもう来ないでくれと言われた小悪党が「俺が来たくなくても、どうやらあんたとの間には不思議に縁があるらしい」などと言う意味で言うセリフ。(講談・梁川庄八、落語・橋の結婚:「御縁談のお周旋:せわ:をすることを橋渡しなぞと申します。また縁なき橋は渡られぬなぞとも申します」)
縁は異なもの(味なもの、ウドが刺身のツマになる)(えんはいなもの):【意味】男女の縁は不思議なものである、ということ。(海のものと山のものが一皿の料理になることもある)(講談・祐天吉松、西郷南洲、真柄のお秀、落語・たらちね:「エエ一席申し上げます。この、縁は異なものということを昔からよく申しますが」、宿屋の仇討、髪結新三、猫忠、橋の結婚)(参照)→合縁奇縁《い》
縁は切っても血筋は切れぬ(えんはきってもちすじはきれぬ):【意味】たとえ勘当して親子の縁を切っても、親子の情愛を断ちきることまではできない、という意味の文句。(落語・刀屋:「縁は切っても血筋は切れぬ とうとう勘当てえことにしましたが、縁は切っても血筋は切れぬという譬えがある。やっぱりなにかの時に思い出して、今頃はどうしているかと」、真景累ヶ淵、牡丹燈籠)
猿臂を伸ばす(えんぴをのばす):【意味】猿のように長く手を伸ばす(そして何かをつかんだりする)こと。(講談・旗本五人男)
閻魔様が塩辛をなめたような(えんまさまがしおからをなめたような):【意味】気むずかしい表情をいう。(落語・百年目:「お店にいる時はこわい顔ですね、どうも……えへッ、閻魔さまが塩辛を舐めたというような」)
編:松井高志2004-
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