2005/04/29

[さ]で始まる語句・ことわざ

さあ事だ馬の小便渡し船さあことだうまのしょうべんわたしぶね):【意味】渡し舟の上で馬が小便を始めてしまいてんやわんやの騒動になる様子を描いた川柳。(落語・巌流島、紫檀楼古木、孝行娘=小烏丸)

細工は粒々、仕上げを御覧じろ(見るがいい)(さいくはりゅうりゅう、しあげをごろうじろ):【意味】細工のやり方というのはいろいろあるものだ。だから、ああだこうだと批評するのなら仕上げをじっくり見てからにしてもらいたい、ということ。(講談・清水次郎長、寛永三馬術、安政三組盃、三家三勇士、落語・大工調べ、乾物箱)

才子多病さいしたびょう):【意味】才能のある人、頭の良い人は、ともすれば病気がちであること(そのためせっかくの才能を生かし切れずに短い生涯を終えることさえある)。女性の場合「佳人薄命」。(講談・鈴木重八)(参照)→茂りやすい楊柳は秋の初風に堪えられぬ

棹は三年櫓は三月さおはさんねんろはみつき):【意味】船頭が船を操るのに、竿や櫓を操るこつを習得するために必要な期間を言い表した言葉。簡単そうに見えて難しいのが棹の扱い方で、舟の片舷から棹を出すだけで直進できるようになるまでは三年の経験が必要。それに対し、櫓は三月も練習すれば一人前になれるということ。(落語・船徳・お初徳兵衛、橋場の雪=夢の瀬川、舟徳)

逆さに振るって鼻血も出ないさかさにふるってはなぢもでない):【意味】催促に来られてもまるっきりすかんぴんなので一文も出せない、ということ。(落語・掛取万歳、お化け長屋)

(酒は灘:燗、)肴は気取、酌は髱(たぼ)(さかなはきどり、しゃくはたぼ):【意味】「肴は刺身、酌は髱」ともいう。どうせ酒を飲むなら、肴は気の利いた(「気取」とは建築用語の「木取り」に由来し、優れた素材を無駄なく調理すること)刺身なぞを誂えてもらいたいし、酌をしてもらうのは女性(美女)に限る、ということ。(講談・大久保彦左衛門、落語・成田小僧、夢金、札所の霊験、墓見)

坂は照る照る鈴鹿は曇る、間の土山雨が降るさかはてるてるすずかはくもる、あいのつちやまあめがふる):【意味】江戸時代に、東海道を往来する旅人たちが、「西の難所」といわれた鈴鹿峠を通る時に唄った「鈴鹿馬子唄」の一節。土山は東海道土山の宿。実際は、坂と鈴鹿の間に土山宿があるわけではない。芝居「重の井子別れ」でも使用されるので有名。(講談・新門辰五郎、重の井子別れ)

盛らずば桜も人に折られまい桜の枝は桜なりけりさからずばさくらもひとにおられまいさくらのえだはさくらなりけり):【意味】道歌。桜の枝も、なまじ花の盛りでなければただの木の枝であるから、折られずに済むものを、花があるから持って行かれてしまう。出る杭は打たれるのだから、余計な欲を持たず、分をわきまえておとなしくしていれば難に遭わずに済むのだという意味。または「桜の科は桜なりけり」といい、悪事をはたらいて、それは適当な被害者がそこにいたからだ、と居直る態度。(講談・大久保彦左衛門)

盛んなるところ美人ありさかんなるところびじんあり):【意味】辺鄙なところと違い、都会繁華の地には美女が多いものだ、ということ。(落語・札所の霊験)

先々の時計になれや小商人さきざきのとけいになれやこあきんど):【意味】小商い(行商)をする人は毎日正確に時間を決めてお得意を回るようにすれば、何屋が来たから今何時だ、と時計がわりに覚えてもらえるようになり、次第に商売が軌道に乗るのである。まめに歩くのが商売のコツであるということ。(講談・寛永御前試合、落語・孝行糖)(参照)→町々の時計になれや小商人

先んずる時は)れば人を制す(、後るる時は人に制せらる)(さきんずるときはひとをせいす、おくるるときはひとにせいせらる):【意味】前半が独立して使われている。「史記」の「項羽記」から出た諺。人より先に物事を行えば相手を圧倒でき、出遅れれば逆に押されっぱなしになってしまうのだ、だから喧嘩でも何でも最初に機先を制するのが肝心だということ。(講談・清水次郎長、忠僕直助、木村長門守、寛永三馬術、太閤記、三家三勇士、夕立勘五郎、山中鹿之助、加賀騒動、重の井子別れ、落語・ちきり伊勢屋、船徳、うそつき弥次郎)

さくいさくい):【意味】さっぱりと淡泊な人柄のこと。(落語・宮戸川)

桜咲く桜お山にお酒が無ければ只の山さくらさくさくらおやまにおささがなければただのやま):【意味】花見に酒はつきもの。花盛りの山であっても、酒がなければ何の価値もないという言い回し。(落語・花見の仇討、花見酒、あたま山)

桜の花を柳の枝に咲かせて、梅の匂いを持たせたようさくらのはなをやなぎのえだにさかせて、うめのにおいをもたせたよう):【意味】(参照)→「梅が香を桜の花に持たせつつ柳の枝に咲かせてぞ見ん」に同じ。(講談・伊達誠忠録)

桜は若きを以て良しとなし、梅は老いたるを以て尊しとなすさくらはわかきをもってよしとなし、うめはおいたるをもってたっとしとなす):【意味】桜は若木、梅は老木が良いのである、という意味の諺。主に老人がまだまだ若い者には負けない、自分たちも捨てたものではない、と言いたいときに引用する言い回し。(講談・大久保彦左衛門)

酒一杯にして人酒を飲み、酒二杯にして酒酒を飲み、酒三杯にして酒人を飲むさけいっぱいにしてひとさけをのみ、さけにはいにしてさけさけをのみ、、さけさんばいにしてさけひとをのむ):【意味】盃を重ねるに連れて、だんだん人が酒に飲まれておのれを失っていくという過程をいう。お酒もいいけど、まぁほどほどにしておかないと後悔しますよ、という教訓である。(講談・小山田庄左衛門、落語・禁酒番屋、子別れ)

酒がお客かお客が酒か酒がお客を連れてくるさけがおきゃくかおきゃくがさけかさけがおきゃくをつれてくる):【意味】都々逸。お酒を飲むと遊里に行きたくなってくるというのが男の性質というもの。遊郭にしてみたらお客と酒は切っても切れない関係。酒がお客を呼んできてくれるようなものだ。(落語・五人廻し)

酒でしのがす苦の世界さけでしのがすくのせかい):【意味】いわゆる苦界つとめのつらさ切なさは、酒をあおって一時的にごまかすしかない。(落語・居残り佐平次)(類義)→うさを忘れるのは酒

酒なくてなんのおのれが桜かなさけなくてなんのおのれがさくらかな):【意味】花見には酒がなくちゃまるで話にならない。大体、酒さえも飲まずに、何の愉快で楽しいことがあるだろう、生きている甲斐もなければ喜びもないじゃないか、という酒飲みの言い分をいう狂句。(講談・小野寺十内、赤穂四十七士伝、落語・芝浜、花見酒、六尺棒)

酒には十癖あり、一に寝、二機嫌、三笑い、四勘定、五管巻き、六後引き、七助平、八泣き、九盗み、十喧嘩さけにはじゅっぺきあり、いちにね、にきげん、さんわらい、しかんじょう、ごくだまき、ろくあとひき、しちすけべい、はちなき、くぬすみ、とうけんか):【意味】酒癖、いわゆる「~上戸」には十種あり、寝る人、上機嫌になる人、勘定する人、管をまく人、くどい人、助平になる人、泣き上戸、盗癖、喧嘩をする人である。(講談・笹川繁蔵)

酒のない国に行きたい二日酔いまた三日目に帰りたくなるさけのないくににいきたいふつかよいまたみっかめにかえりたくなる):【意味】ひどい二日酔いの時は、「もう酒のない国に行きたい」などと思うものだが、そう思って三日目にはまた酒のある国で飲みたくなってしまうのが酒飲みのしょうもないところである、という狂歌。(落語・居酒屋、備前徳利、花見酒)

酒飲みというものは騙して寝かせるより外仕方ないさけのみというものはだましてねかせるよりほかしかたがない):【意味】厄介な酔っぱらい(酒乱の人)の扱い方。ともかく嘘をついてでも、一旦寝かしてしまうのがもっとも安全なあしらい方である。(講談・幡随院長兵衛)

酒呑みは肴はいらぬさけのみにさかなはいらぬ):【意味】本当の酒好きは、体に毒だろうが何だろうがおかまいなく、肴など食わずにひたすら酒を味わい、飲み続けるものである。(講談・伊達誠忠録)

酒飲みは奴豆腐にさも似たりはじめ四角であとはぐずぐずさけのみはやっこどうふにさもにたりはじめしかくであとはぐずぐず):【意味】「末はぐずぐず」とも。酒好きの人は、初めはきちんとした態度をしているが、酔っぱらってくると、てんでだらしなくなってしまう。それは奴豆腐が最初はきちんとした四角なのに、食べていくと崩れていくのによく似ている、という狂歌。(落語・居酒屋、一人酒盛)

酒は過ちの基さけはあやまちのもと):【意味】とかく酒の上の過ちというのは起こりがちである、酒は人格を変貌させるということ。(落語・子別れ)

酒は命をけずる鉋さけはいのちをけずるかんな):【意味】酒をたくさん飲んでいると体に悪い、従って寿命が縮むということを簡潔に言い放った諺。(落語・堀川、備前徳利、子別れ)(参照)→ため息は命を削る鉋かな

酒は憂いをはらう玉箒さけはうれいをはらうたまははき):【意味】酒を飲めば憂さ、苦しさを忘れることができる。だから酒は誠に結構なものだ。(講談・寛永三馬術、荒木又右衛門、伊達誠忠録、太閤記、落・清正公酒屋、芝浜、備前徳利、縁結び浮名の恋風=清正公酒屋、花見酒、子別れ)(類義)→うさを忘れるのは酒

酒は買うべし、小言は言うべしさけはかうべし、こごとはいうべし):【意味】(参照)→「小言は言うべし、酒は買うべし」に同じ。(落語・味噌蔵)

酒図りなし乱に及ばずさけはかりなしらんにおよばず):【意味】「量りなし」とも書く。「論語」より。酒は量を定めなくても、乱れない程度に飲むべきであるという戒め。(講談・猿飛佐助)

酒は燗、魚は気取り酌は髱さけはかん、さかなはきどりしゃくはたぼ)【意味】(参照)→「肴は気取り、酌は髱」に、「酒はお燗をつけるべきだ」という条件を付与した諺。「たぼ」は「美婦」とも書く。(講談・田宮坊太郎、柳生三代、落語・成田小僧、首提灯、佛馬、三人旅、赤垣源蔵)

酒は気狂水、酔漢は酒狂人さけはきちがいみず、よっぱらいはさけきちがい):【意味】人は酔うと自分をコントロールできず、人格が変わり、理性を失うことが多い。酒はそういう作用を持つものである。酔っぱらいは一時的な狂人のようなものだ、という手厳しい表現。(講談・清水次郎長、落語・らくだ、芝浜、備前徳利、首提灯、庖丁、縁結び浮名の恋風=清正公酒屋)

酒外れはせぬものさけはずれはせぬもの):【意味】酒席で一人だけ飲まないでいるのは座がしらけるから、さされた杯は干すのがマナーであるという言葉。飲まない人に無理矢理酒を強要する時に使われる。(落語・三十石夢の通い路)(参照)→一杯酒は飲まぬもの

酒は天の美禄さけはてんのびろく):【意味】酒は天が人間に与えたもうたありがたい報酬であるということ。古来から酒を讃えてこのようにいう。(講談・水戸黄門、伊達誠忠録、笹川繁蔵、横川勘平、寛永三馬術、落語・親子酒、芝浜)

酒は飲むべし、飲むべからずさけはのむべし、のむべからず):【意味】酒は人によっては適度に飲んで利点があり、人によっては飲み過ぎのあげくとんでもない害になるものである、ということ。酒の効能と欠点、つまり両刃の剣のようなものであることを述べた言葉。後半は「飲まるべからず」とも。(講談・矢田五郎右衛門、小山田庄左衛門、落語・一人酒盛、禁酒番屋、清正公酒屋、備前徳利、親子酒、かはりめ、饂飩屋)

酒は飲んでも飲まいでも(、勤むるところはきっと勤むる武蔵守)(さけはのんでものまいでも):【意味】「仮名手本忠臣蔵」の高師直が塩冶判官に言う高圧的なセリフの一部。酒くらい飲んでいようが飲んでいまいがかかわりなく、この私はきっちり仕事をします、みくびらないでくださいという意味。(講談・笹野名槍伝、左甚五郎、落語・大山詣り)

酒は化け薬さけはばけぐすり):【意味】→「酒は気狂水」に同じ。

酒は百薬の長(、百毒の長)(なり、多く喰らえば命を断つ)(さけはひゃくやくのちょう、ひゃくどくのちょう):【意味】適度な飲酒はいかなる薬よりも体によい。が、飲み過ぎればあらゆる毒よりも体を損ねる、という警句。(講談・横川勘平、伊達誠忠録、両越大評定、仏の作蔵、赤穂四十七士伝、落語・親子酒、ちきり伊勢屋、芝浜、備前徳利、花見酒、六尺棒、市助酒、饂飩屋)

酒は礼に始まって乱に終わるさけはれいにはじまってらんにおわる):【意味】宴会などで酒を飲み始める時はみな行儀良いのが、次第に酔っぱらっていき、宴が果てる頃には誰もかれも理性を失って無秩序な状態になってしまう、ということ。(講談・柳生三代、幡随院長兵衛、加賀騒動、出世の盃)

酒はわざわいの種さけはわざわいのたね):【意味】酒を飲むということはとかく様々なトラブルの元凶である、ということ。飲まなければ避けられた災難はたくさんある。(講談・小山田庄左衛門)

雑魚の魚交りざこのととまじり):【意味】雑魚は小エビや小魚。大物が集まっているところに、小物が不似合いに入りまじっている、という例え。自分のようなつまらない軽輩がこのような場所に招かれて光栄です、と謙遜していう場合に使う。(講談・清水次郎長、倉橋伝助、塚原ト伝、寛永御前試合、玉菊燈籠)

雑魚ももぞうも一緒にざこももぞうもいっしょに):【意味】ろくでもない連中と一緒くたに、の意。雑魚、もぞう(無象と書く。「盲象」と書く場合も)はつまらぬ人々のたとえ。(落語・宿屋の仇討、宿屋仇)(参照)→有造毛造(無造、無象)

ササホーサささほーさ):【意味】(放任・乱脈の結果)めちゃめちゃ、台無しになってしまうこと。(注:編者の故郷では「ササラホーサラ」という)(講談・祐天吉松)

座して(遊んで)食らえば泰山も空し(山も尽きる)、大海も呑み干す(ざしてくらえばたいざんもむなし):【意味】働かずに暮らせば、どんなに莫大な財産でも使い果たしてしまう、ということ。講談には富裕な身分からあっという間に困窮してしまう人物がたくさん登場するので、そのつどこの表現が使われる。(講談・矢田五郎右衛門、寛永三馬術、大石内蔵助、間十次郎、天野屋利兵衛、和久半太夫、大塩瓢箪屋裁き、鼠小僧次郎吉、幡随院長兵衛、越後伝吉、赤穂四十七士伝、薮原検校、落語・ちきり伊勢屋、富久、怪談市川堤、乳房榎)

指して行方は白雲の、山はた山をうち越えて(→寄辺渚の捨て小舟、取りつく島もなき身)(さしてゆくえはしらくもの、やまはたやまをうちこえて):【意味】講談などで、頼る者のない心細い身の上の人物があてもなく放浪するさまを述べる際の七五調慣用表現。(講談・寛永三馬術、笹野名槍伝)

ざっかけないざっかけない):【意味】雑な、がさつな。(講談・祐天吉松、落語・山崎屋)

悟りなば出家(坊主)になるな魚食え地獄へ行って(落ちて)鬼に負けるなさとりなばしゅっけになるなさかなくえじごくへいっておににまけるな):【意味】一休禅師(一三九四~一四八一)の作った道歌であるという。死後の救済を求めて生前に生半可な信心をしようというのは誤りである。せいぜい地獄へ行って鬼に負けないよう、魚などをどんどん食って現世を満喫しておけ、という教え。落語や講談では、僧侶は表向き飲酒を戒め魚貝を口にしないが、実際は皆が皆禁欲しているわけでもない、という意味で引用される。(講談・田宮坊太郎、落語・万金丹)

さぶるこさぶるこ):【意味】古語でいう遊女のこと。「さぶるおとめ」。万葉集が出典。(落語・紺屋高尾)

寒いところで何よりのご馳走は火さむいところでなによりのごちそうはひ):【意味】雪中に行き悩んだ旅人が行きずりの家に宿を求め、食事など何も出されなくても、たき火に当たるのが今は何よりご馳走だ、と言うときに口走るきまり文句。(講談・水戸黄門、寛永御前試合、落語・鰍沢)

寒からぬほどに見ておけ嶺の雪さむからぬほどにみておけみねのゆき):【意味】吉田兼好が言った、と落語「五人廻し」に述べられている言葉(後世の川柳?)。道楽も結構だが夢中になるな、せいぜい我が身を大切にしなさい、という意味。(講談・関東七人男、落語・五人廻し)

侍は孝を捨てても忠を立てねばならぬさむらいはこうをすててもちゅうをたてねばならぬ):【意味】(参照)→孝を立てんか忠を立てる能わず、忠たらんと欲せば親に不孝というようなジレンマに、武士はしばしば陥るのだが、その場合、主君への忠節を優先すべきであるということ。(講談・磯貝十郎左衛門)

侍は人の鑑さむらいはひとのかがみ):【意味】武士は「四民の源上」(最上の階級)であるから、人格的に全ての人の手本となるべき存在であるという考え方をいう言葉。(落語・井戸の茶碗)(参照)→四民の源上に立ち、三民の上席を穢す花は桜木人は武士

さめての上のご分別さめてのうえのごふんべつ):【意味】「仮名手本忠臣蔵」七段目の平右衛門のセリフより。あなたもよんどころなくお酒を飲まなければならないのでしょう、飲めば酔わずにはいられますまい、酔いがさめてからあらためてご判断なさいまし、という意味。酔っぱらいがややこしい話はしらふに戻ってからにしてくれ、というときに使う。(落語・子別れ、船徳、鰻の幇間)

猿の尾は短し、虎の尾は長しさるのおはみじかし、とらのおはながし):【意味】太閤秀吉は「猿」と言われ、松平竹千代こと徳川家康は「寅童子」の化身と言われた。ここでは、文字通り、猿より寅の尾は長く、その子孫の繁栄の度合いには大きな差があった、ということ。(講談・天一坊)

去る者は追わずさるものはおわず):【意味】去っていく者は、敢えて引き留めないということ。(講談・赤穂義士本伝)

去る(遠ざかる)者は日々にうとしさるものはひびにうとし):【意味】親しかった人も、疎遠になれば次第にかつての情愛が薄れてくるのが自然の成り行きである。また、亡くなった人への思慕は時間の経過と共に薄れてくる、ということ。(講談・天保六花撰、由井正雪、岩見重太郎、夕立勘五郎、祐天吉松、安中草三郎、関東七人男、落語・藪入り、王子の幇間)

さわらぬ神にたたりなしさわらぬかみにたたりなし):【意味】物事に関わりを持たない主義に徹すれば、難を逃れることができるという教え。(講談・笹野名槍伝、由井正雪、岩見重太郎、慶安太平記、加賀騒動)《い》

さわらば(触れなば)落ちん風情さわらば・ふれなばおちんふぜい):【意味】男が誘えばすぐに応じそうな女性の様子をいう。(講談・幡随院長兵衛)

三月比目魚(ひらみ)は犬も食わぬさんがつひらみはいぬもくわぬ):【意味】時期の遅れたヒラメの刺身は犬も食わない、ということ。(講談・関東七人男)

三家の家来は陪臣にして陪臣にあらずさんけのけらいはばいしんにしてばいしんにあらず):【意味】徳川御三家の家臣は、たしかに大名家の家来ではあるが、より直参に近いので、他の諸大名の家臣とは格が違う、ということ。(講談・千馬三郎兵衛、由井正雪、慶安太平記)

三軒長屋の間に住むと魔がさすさんげんながやのあいだにすむとまがさす):【意味】迷信。三軒並んだ長屋の真ん中の家に住むと通常ではありえないような悪念に取りつかれる、ということ。(落語・三軒長屋)

三公の位に至るさんこうのくらいにいたる):【意味】三公とは、太政大臣、左大臣、右大臣。または左大臣、右大臣、内大臣のことをいう。官職としての最高位をいう。大出世を遂げることをこのようにいう。(講談・天一坊)

三歳の翁、百歳の童子さんさいのおきな、ひゃくさいのどうじ):【意味】年が若くても洞察力が優れ、先の先まで読めるようなものの分かった人を褒めて言う言葉。「清水次郎長」の「心中奈良屋」で博徒・和田島太左衛門が清水次郎長を評していう言葉。(講談・清水次郎長、寛永御前試合)

三尺高い木の空で(横腹に風穴が開く時は)(さんじゃくたかいきのそらで):【意味】いずれ処刑され、獄門台でさらし首になることを予期して悪人が居直り半分にこう言う。または仲間に「今更後へは引けない」と因果を含めるセリフに出てくる。木の空で「安房上総の山を眺める」こともある。(講談・水戸黄門、両越大評定、落語・居残り佐平次)

三尺の槌をもって大地を打つは外れることもあるが……(さんじゃくのつちをもって・だいちをうつははずれることもあるが):【意味】たとえ大きな槌で大地を打って、それが外れるようなことがあっても(そんなことはありえない)、自分の予言や予測が絶対に外れない、ということを断言するときのきまり文句。(講談・清水次郎長、梁川庄八、落語・ちきり伊勢屋)(参照)→拍つ手ははずれても

三尺の童子さんじゃくのどうじ):【意味】幼児のこと。または無知な者のたとえ。「~も知らぬ者はない」といえば、非常に高名であるということ。(講談・西郷南洲)

讒者の舌の鋭きことは干将莫邪に過ぐざんしゃのしたのするどきことはかんしょうばくやにすぐ):【意味】およそ、人を陥れようとして事実を曲げようと陰謀をたくましくする者の言うことの鋭さは、古の名剣にもまさるものであるということ。(講談・太閤記)(参照)→干将莫耶の剣も持ち手に依る

三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして命を知るさんじゅうにしてたち、しじゅうにしてまどわず、ごじゅうにしてめいをしる):【意味】「論語」(為政編)の有名な一節。「而立」は三十歳、「不惑」は四十歳、「知命」は五十歳の異名となっている。(講談・水戸黄門、落語・万金丹)

三十六計逃げるに如かず(逃げるが専一)(さんじゅうろっけいにげるにしかず):【意味】逃げるべき時には逃げて、我が身の安全を図ることが、兵法におけるもっとも良い策である。困ったらとりあえず逃げなさい、ということ。(講談・水戸黄門、幡随院長兵衛、大久保彦左衛門、塚原ト伝、野狐三次、鈴木重八、西郷南洲)

三上戸さんじょうご):【意味】主な三つの酒癖をいう。泣き上戸、笑い上戸、酒乱。(落語・棒鱈)

山椒は小粒でもぴりりと辛いさんしょうはこつぶでもぴりりとからい):【意味】体は小さくても、気が強く、気性が優れていたり才能が優れていたりして、馬鹿にできない人のことをさしてこういう。(講談・宮本武蔵、誰が袖音吉、落語・野崎詣り、素人相撲、ゆめ=貸本屋)

三寸不爛の舌さんずんふらんのした:「ふびん」とルビを打ってある速記もあるが):【意味】巧みな弁舌のこと。雄弁であること。三寸というのは舌の長さを意味する。(講談・伊賀の水月、安政三組盃、慶安太平記)

三千世界の烏を殺し主と朝寝がしてみたいさんぜんせかいのからすをころしぬしとあさねがしてみたい):【意味】幕末の志士・高杉晋作(または桂小五郎?)が作ったといわれる都々逸。「三枚起請」のサゲに応用される。起請文(年が明けたら一緒になろう、浮気はしないと熊野神社にかけて約束をしたためた誓約書)は一枚書くごとに熊野権現の烏が三羽死ぬという言い伝えがあった。この噺に出てくる女は同じ文面の起請文をたくさんの客へ多量に渡している。(落語・三枚起請)

三千の罪、不孝より大なるはなしさんぜんのつみ、ふこうよりだいなるはなし):【意味】世の中にはたくさんの罪があるが、何よりも不孝というのがもっとも罪深い、ということ。(講談・大久保彦左衛門、柳生二蓋笠)

三度の神は正直さんどのかみはしょうじき):【意味】占いや勝負事は、三回続けて同じ結果(目)が出たら、それは確実なものであるということ。(講談・鎌倉星月夜)

三人旅は一人乞食さんにんたびはひとりこじき):【意味】三人で旅行していると、うち二人が組になって行動しがちで、残る一人がのけ者にされて貧乏くじを引く事が多い、という諺。(落語・長者番付、朝這い、三人旅)

三人寄れば満座さんにんよればまんざ):【意味】人が三人集まると、すでにそれは公的な場である、プライベートな集まりではないということ。(講談・野狐三次)

三人寄れば文殊の智慧さんにんよればもんじゅのちえ):【意味】個々人は凡人でも、三人集まって相談すれば文殊菩薩(仏の智恵を象徴する菩薩)のような良い知恵が出る、ということ。(講談・伊賀の水月、音羽丹七、相馬大作、小猿七之助)《い》

三年添って子なきを去るさんねんそってこなきをさる):【意味】「嫁して三年子なきは去る」ともいう。夫婦が一緒になって三年間子供ができなければ、妻は離縁されても仕方がないのだ、とかつては言われていた。「七去」(かつて女房を離縁する規準といわれた:「父母に順ならず」「子なき」「淫」「炉」:嫉妬深いこと:「悪疾」「多言」「竊盗」)のひとつ。(講談・忠臣二度目の清書、本所五人男=七去、落語・小言幸兵衛、搗屋幸兵衛、安産)(参照)→悪しき病あれば去るべし

ざんないざんない):【意味】上方言葉で「見苦しい」「見るに耐えない」「様はない」こと。(落語・仔猫)

産の入用は藁の上から三貫さんのいりようはわらのうえからさんがん):【意味】(参照)→薦の上から三貫と同じ。(講談・水戸黄門)

三伏の炎暑さんぷくのえんしょ):【意味】「三伏」とは夏のもっとも暑い期間のこと。夏至の後三番目の庚の日を「初伏」、四番目の庚の日を「中伏」、立秋後最初の庚の日を「末伏」という。この期間の非常な暑さのことをいう。(講談・由井正雪)

編:松井高志・2004-

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