2005/04/29

[つ]で始まる語句・ことわざ

口返答(つう)を返すつうをかえす):【意味】口答えすること。(落語・心眼:「第一お前さんに口返答を返したことがないてえじゃァないか」)

杖の下から回す子はかわいいつえのしたからまわすこはかわいい):【意味】次項に同じ。杖を上げて打とうとするとき、すがってくる子は不憫で打てない。(落語・堀川:「あゝそれは……杖の下からまわす子はかわいい……や」)

杖の下に入る犬は打てぬつえのしたにはいるいぬはうてぬ):【意味】助けを求めてすがってきた者をむざむざ見殺しにはできない、という意味の例え。(講談・野狐三次:「何は兎もあれ、杖の下に入る犬は打てぬの譬え、助けてくれと頼まれた以上は、貴様らの手に渡す訳にはならぬ」、祐天吉松)(参照)→尾を振る犬は叩かれぬ

柄に手をかければ元の柳かなつかにてをかければもとのやなぎかな):【意味】柳の木のあたりに幽霊が、退治してくれる、と思わず刀の柄に手を掛けてよくよくみれば気のせいであった、という川柳。(落語・反魂香:「『柄に手を掛れば元の柳かな』『幽霊の正体見たり枯尾花』などといいまして、有るものかないものか演者(わたくし)には分りません」)(参照)→幽霊の正体見たり枯尾花

突き当たって損なのは無法者と肥桶(こえたご)(つきあたってそんなのはむほうものとこえたご):【意味】往来でぶつかってはいけないのは、ちんぴらと肥桶を担いだ人である。どちらもこちらの一方的な大損害になるから。(講談・幡随院長兵衛:「突當つて損なのは、無法者と肥桶だと申しますが、先づそんなものでございませうか」)

月が甍から甍へ入る大江戸つきがいらかからいらかへはいるおおえど):月が家屋敷の屋根屋根のかなたから上がり、同様に屋根屋根へと落ちてゆく。江戸という都会の広大なことをいう文句。(落語・首提灯:「手前どもの故郷とちがいまして、月が甍から甍へ入るという大江戸のこと」)

月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月(十五夜)の月つきづきにつきみるつきはおおけれどつきみるつきはこのつきのつき):中秋の名月を讃えた歌。「月」が八回出てくるので、陰暦八月十五夜を意味する。(講談・朝顔日記:「日は既に暮れて、夜の情景は又一段。月々に月見る月は多けれど月見る月は此月の月」、名月若松城)(参照)→瓜売りが瓜売りに来て売り残り瓜売り帰る瓜売りの声

月に風情の待乳山つきにふぜいのまっちやま):【意味】浅草寺の支院待乳山聖天(まつちやましょうてん)は、隅田川の西岸にある海抜およそ十メートル足らずの「丘」。ただし江戸時代には、上野の山からもこの待乳山が良く見え、待乳山からの眺望は素晴らしく、西に富士、東に筑波が見渡せたという。その待乳山の月の風情をいう。「帆かけた船が見ゆるぞえ」と続く唄の文句。(落語・木乃伊取り、船徳:「月に風情の待乳山、帆かけた船が見ゆるぞえ……あれをやるとお前さんはよほど船をこぐのがうまいってほめられやした」)

月に叢雲(の憂いあり、花には嵐の心配あり、寸善尺魔)のつきにむらくも、はなにはあらしのたとえ):【意味】「月に叢雲、花に風」とも。良いことが続くと、必ず邪魔が入る、という例え。好調は持続しない。(講談・寛永三馬術、猿飛佐助、相馬大作、水戸黄門・出世の高松、柳沢昇進録、西郷南洲、落語・なめる、全快:「処が月に叢雲花に風、国に盗賊家には鼠と申します比喩があります通りで」=死神)《い》

(流れる)月日に(歳月に・過ぎゆく駒に)関守なくつきひにせきもりなく):【意味】(参照)→光陰矢のごとく、月日に関守なしに同じ。(講談・近江聖人、紀伊国屋文左衛門、太閤記、朝顔日記、野狐三次、岩見重太郎、越後伝吉、祐天吉松、寺井玄渓:「月日に関守なく、倅の玄達もだんだん成人いたし、この頃では父に代って、病家まわりが出来るようになりました」、重の井子別れ、落語・子別れ、吉野狐、宮戸川、牡丹燈籠)

月夜に釜を抜くつきよにかまをぬく):明るい夜に竈にかかっている釜をまんまと取っていくように、幸運と相手の油断につけこんで何かをしてのけること。逆に「釜を抜かれる」のは、ひどく油断して、まんまとしてやられること。=その結果呆然自失すること。(落語・三人旅:「月夜に釜ァ抜くってえから、ただよ」)《い》

佃育ちの白魚さえも、花に浮かれて隅田川つくだそだちのしらうおさえも、はなにうかれてすみだがわ):【意味】佃あたりの白魚が春になると隅田川をのぼってくる(かつては隅田川で白魚がとれた)が、それは桜花にさそわれるのである、という都々逸。(落語・芝浜:「おふるい都々逸に『佃育ちの白魚さえも、花に浮かれて隅田川』なんてえのがありまして」)

附焼刃は剥げやすいつけやきばははげやすい):【意味】表面を応急的にそれらしくとりつくろってみても、虚飾は所詮身につかず、見破られやすいということ。人まねをして知ったかぶりしてもすぐばれる、という落語にありがちな状況を表す。附焼刃は、切れない刀の刃に鋼の焼き刃をつけた質の悪い物のこと。またすぐ切れなくなってしまう。(落語・子ほめ、鮑のし、阿弥陀池:「真似というものはうまいこといかんもんで。附焼刃ははげやすいということを言います」、松竹梅、牛の嫁入、茗荷屋)

辻番は生きた親父の捨て所つじばんはいきたおやじのすてどころ):【意味】辻番所(武家屋敷のある町の辻にあった)にいて留守居しているのは道楽者の爺や元岡っ引きのおやじばかりである、という川柳。(講談・赤穂義士本伝:「川柳に、――辻番は生きた親父の捨てどころ。というのがございますが、それは旗本が持ちよりでこしらえた辻番のことで」)

土一升に金一升つちいっしょうにかねいっしょう):【意味】土と金とを同価値で交換するほどである、ということ。地価が高いこと、江戸や大坂が繁盛した大都会であることを例えた言い回し。が、実際に江戸の金座の地面にはおびただしい金糞が土に混じっており、この諺は比喩表現ではない、という指摘が矢田挿雲の「江戸から東京へ」にある。(講談・安政三組盃、笹野名槍伝、鼠小僧次郎吉、越後伝吉:「土一升金一升、其の繁榮とには、傳吉見るものに目を驚かし、聞くものに耳を驚かすといふ光景(ありさま)」、落語・雪の瀬川=夢の瀬川、後の船徳=お初徳兵衛)

包むとすれど現われにけり何とやらつつむとすれどあらわれにけりなんとやら):【意味】「隠そうとしたが、そうすればするほど物事は露見する」ということ。「しのぶれど色に出にけり……」とは無関係か。(講談・安政三組盃:「いや小染、包むとすれど現われにけり何とやらだ、どうもうまくねぇ」)

勤むる供徳共に成仏つとむるくどくともにじょうぶつ):【意味】良い行い(仏参など)を重ねれば自分もやがて成仏できるという諺。(講談・幡随院長兵衛:「アゝ勤むる供徳共に成佛、矢張り一緒に行かなきアならねへか」)

勤め上がりは自堕落つとめあがりはじだらく):【意味】遊里から身請けされて女房になった女はとかく怠け者でだらしがない、という評判を立てられがちだった。(講談・鼠小僧次郎吉:「勤め上がりは自堕落だから、愛想を尽かされねえようにしなせえ」)

勤めする身も素人も恋に身分の隔てはないつとめするみもしろうともこいにみぶんのへだてはない):【意味】遊女も素人の女と同じく、男に恋をするという点でなんら変わりはない、ということ。(落語・首ったけ:「『勤めする身も素人も戀に上下の隔てない』と申して、勤めの身でも、戀を知らない事はないけれど、大体女郎衆に云わせると、自分の好いた人は儘にならない」)

つまづく石も縁の端つまずくいしもえんのはし):【意味】(参照)→一河の流れ一樹の蔭、つまずく石も縁の端、袖振りあうも他生の縁、躓く石も縁の端に同じ。(落語・高砂や:「『袖すり会うも他生の縁』『つまずく石も縁の端』てェますから、われわれのお噺をかように聞いていただきます、これもまァなんかのご縁でございます」、風呂敷)

妻は夫をいたわりつつまはおっとをいたわりつ):【意味】「夫は妻を慕いつつ……」と続く、浪曲「壺坂霊験記」のサワリ。座頭沢市と女房お里が観世音の霊験で救済される。講談でも読まれる、夫婦の情愛を描く逸話。(落語・佃祭:「女は男にかわいがってもらうよりほか楽しみがねえんですから、えゝ。妻は夫をいたわりつ、てえやつなン……えゝ。」)

妻は目下より貰えつまはめしたよりもらえ):【意味】地位が上(金銭的に自分より潤沢)な家から嫁を貰ってはいけない。(講談・大石瀬左衛門:「妻は目下より貰へといふ譬の通り、僅五十石頂戴しても、淺野家の家來。持參金に目が眩れて妻を迎へたと言はれては、同藩の者に對しても面目ない」)

罪の疑わしきはこれを罰せず(刑せず、寛うすべし)(、賞の疑わしきは賞せ)(つみのうたがわしきはこれをばっせず):【意味】容疑者が犯罪を犯したかどうかについて証拠が不十分であれば、この者を罰してはならないという法的原則。(講談・寛永三馬術、安政三組盃、宮本武蔵、越後伝吉:「罪の疑はしきは之れを寛うすべしといふ事がございますが」、加賀騒動)

(君子は、その)罪を憎みて(その)人を憎まずつみをにくみてひとをにくまず):【意味】犯した罪はそれ自体憎むべきものでも、犯罪者自体を憎んではいけない、という性善説的な教え。(講談・大岡政談安間小金次、梁川庄八、寺坂吉右衛門、夕立勘五郎、盲目吉兵衛、落語・おかめ団子:「おかめ能く決心をしてくれた。罪を憎んで人を憎まずといふ」)(参照)→慈悲の目に憎しと思う人はなし罪ある身こそなお不憫なれ

頭には越路の雪を戴き、額には青海の波、腰には梓の弓を張り、いつしか姿も翁と化しつむりにはこしじのゆきをいただき、ひたいにはせいかいのなみ、こしにはあずさのゆみをはり、いつしかすがたもおきなとかし):【意味】柳生家を相続すべき身でありながら、元々武芸嫌いの上、父の愛妾と怪しき契りを結んでしまい、出奔するはめになった柳生又十郎が、心を入れ替えて名人羽賀井一心斎の元で修業に励み、大久保彦左衛門のとりなしで父・柳生但馬守宗矩と再会する。久々に対面する父はすっかり老けていた。その老いた姿を形容する文句。「慶安太平記」では紀州家附家老・安藤帯刀の描写に用いられる。(講談・柳生二蓋笠:「久々に父の面を見上ぐれば、頭には越路の雪を戴き額には青海の波腰には梓の弓を張り、いつしか姿も翁と化し」、慶安太平記)

爪で拾って箕でこぼすつめでひろってみでこぼす):【意味】コツコツ長いことかけてためたものを一気に使い果たすことのたとえ、または収入に比べ、支出が莫大なことのたとえ。(講談・明智三羽烏:「若し二つでも跨いで登らんとすれば、踏み外します、登れません。大取りより小取りをしろ、爪で拾ツて、箕でこぼす」)

爪で灯をともして貯めた親の子が蝋燭で読む傾城の文つめでひをともしてためたおやのこがろうそくでよむけいせいのふみ):【意味】親が苦心して一代で築き上げた身代、さてその倅は遊興三昧、ただ親の身上を食いつぶすばかりである、という意味の皮肉な狂歌。(落語・親子茶屋:「爪で灯をともして溜めた親の子が蝋燭で読む傾城の文……ええことが言うてございますナ、親父さんが一生懸命はたらいて身代をこしらえると、そこには、極道息子ができあがる」)

強いばかりが男じゃないつよいばかりがおとこじゃない):【意味】喧嘩に強く、腕っ節が強く、度胸があるばかりが男の強さではない。思慮をめぐらせたり、辛抱したり、弱い者に優しくしたりするのも強い男の条件である、ということ。都鳥一家に金を貸してしまったため、命を奪われるはめに陥った森の石松に、兄貴分の小松村七五郎がこう意見する。(講談・清水次郎長:「手前餘り人が良過ぎるぞ。強いばかりが男ぢやアねえや、少しは考えろ」)

釣り合わざるは不縁の元つりあわざるはふえんのもと):【意味】貧富・身分に開きのある結婚には、本来無理があるので、やがて不首尾に終わることが多い、という諺。(講談・田宮坊太郎、山中鹿之助、安中草三郎、富蔵藤十郎、落語・熊の皮、ざこ八、紙入れ、刀屋:「よく考えてごらんな、『釣り合わざるは不縁のもと』と昔から譬えをいうだろう」、長崎の赤飯、塩原多助一代記)

釣針のようなかしくで客を釣りつりばりのようなかしくできゃくをつり):【意味】遊女が馴染み客を誘うために手紙を書く。その文面の「かしく」(女性の手紙の末尾につく語)は、客を釣る釣針のようなものである、という川柳。(落語・たちきり:「釣針のようなかしくで客を釣り……かしくという字で、客釣れるんですね」)

鶴亀鶴亀つるかめつるかめ):【意味】「縁起でもない」時、縁起を直すために言う言葉。(落語・近日息子:「アツ置いてきちまつた弱つたなア、こんな物を店先きへ列べて行きやァがつて、仕様がねえ、アゝ鶴亀鶴亀」、らくだ)

剣の下は潜れるが、理解の下は潜れないつるぎのしたはくぐれるが、りかいのしたはくぐれない):【意味】かかってくる敵の刃ならば力づくでもしのぐことができるけれども、あくまで理詰めで押してこられては、こちらが真っ当である以上はねつけようがない、ということ。(講談・夕立勘五郎:「勘五郎腕を組んで聞いて居つたが、劍の下は潜れるが理解の下は潜れない、成る程是りやア尤もの話しだ」)

鶴は千年、亀は万年つるはせんねん、かめはまんねん):【意味】ともに長生きする生き物のことで、長寿を祝うときのきまり文句。(落語・浮世根問:「鶴は千年、亀は万年の齢を保つ、これも長生きをするめでたい動物だなァ」)

詰んでるに肺肝砕くへぼ将棋つんでるにはいかんくだくへぼしょうぎ):【意味】将棋のへたな人は、とっくに詰んでいる(勝負が決している)のに、まだそれに気がつかず、劣勢を挽回しようと悪あがきするものだ、という川柳。(落語・碁どろ:「そうかと思うと、詰んでるに肺肝砕くへぼ将棋……なんてえのもございまして……もう、本当に動けなくなるまで逃げようてんですからな」)

編:松井高志・2004-

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